遠い遠い遠い昔
レコードを出したことがあった
「 Be Smiling 」
映画「ブッシュマン」の宣伝のために
アナウンサーの私が駆り出されて
PR曲を、業務命令で歌うことになったのだ
しかし
「ブッシュマン」と言う呼び方は
アフリカの現地の方にとっては
侮蔑的な意味合いが込められていると言うので
その後
映画そのものは、タブーになったし
私の歌も、公には、取り上げられなくなった
でもね
レコードが発売された頃は
そりゃもう、すごいキャンペーンだったの
売れっ子の新人歌手みたいだった
デビュー曲発表会と銘打って
新宿西口の高層ビルで
握手やサイン会をしたり
「オレたちひょうきん族」では、毎週歌ったし
特別番組も編成されたし
そうだ! あの老舗音楽番組の
「夜のヒットスタジオ」だって出演した
「 や〜だ! それだけじゃないわよ!
ポンキッキだって、イメージソングになって
出てたわよ、ミッチー!」
そう声をあげたのは
「 オカマの和子さん 」
銀座のバーのママ、和子さん
(私の本当のママも、和子さんだけど)
銀座の和子さんは、見た目は、おじさま
でも中身は女性、LGBTでいらっしゃる
その和子さんが
生まれて初めて購入したレコードが
なんと「 Be Smiling 」だったと言うのだ
「 栃木の田舎の小学生だった私がね
一生懸命毎日毎日貯めてた一円玉貯金を崩して
お兄さんが東京に行くって言うから
お願い!買って来て〜!って頼んだのが
Be Smiling だったのよ!」
「 大好きだったのよ、あの歌!
夢があるのよ! 希望があるのよ!
田舎の小学生にとっては、ワクワクしたのよ」
「 あの声も、素敵!
素直で、とてもハッピーになる声なのよ!
ミッチーの声は、人を幸せにするのよ!」
次から次へと和子さん
「 Be Smiling 」の蘊蓄を語ってくださる
和子さんは、人を介して紹介され
お会いする前に、事前に彼女の著書を拝読した
「僕と母さんの餃子狂詩曲」(集英社)
お母様への想いや
和子さんの今までの人生が書かれているのだけれど
才能も教養もあり、色んな職業の経験もある和子さんが
とても魅力的で、私もお会いしたいと思ったのだ
「 ミッチー、この歌は、今の時代にぴったりなのよ
素晴らしい歌なのよ!
さあ、歌いましょうよ、一緒に!」
和子さんと私
アカペラで歌い出した
でも、私
一番は、かろうじて覚えているものの
二番は、ほとんど覚えていない
でも、和子さんは、躊躇わずに
朗々と、最後まで歌い上げた
「 ダメよ! ミッチー! 自分の歌忘れちゃ!
この歌、二番の詞が素晴らしいんだから!」
よく聞いてみたら
本当に、とてもいい歌
レコードを出した頃は
あまりにも忙しすぎて
プレッシャーだけで、歌を楽しむことも出来なかった
YouTubeで、歌を聞いてみると
ただただ素直に、懸命に歌うその頃の自分が
愛おしくもなった
「 ミッチー、わかってる?
Be Smilingよ、Be Smiling!
笑うのよ! 笑ってなくちゃ!
ミッチーは、笑ってるのが一番似合うの!
あなたの声は、人をハッピーにするの!
あなたは、幸せにする人なんだから!
だから、笑って!笑って!
ビー、スマイリングゥ〜〜〜〜!!!」
ホント、和子さんに会えて良かった
ホントだね
ビースマイリングだね
笑うね
ありがと
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Be Smiling
伊藤薫 作詞・作曲
人はいつでも 時に流され
夢を見ることさえも 忘れているけど
瞳そっと 閉じれば見えてくる
遠く青く広い 失くした大地
思ったことの一つも言えずに
みんな満ち足りたふり しているだけだわ
だけど胸の奥で燃えている
熱く響くドラム 心に鳴るわ
都会はサバンナ 人は狩人
もっと激しく走ってみたい
言葉はいらない 微笑みあれば
自然な笑顔が一つあれば
Be Smiling
星のない夜 風のない朝
そしてまた一日が 何気なく過ぎる
だけど胸の 奥のざわめきは
熱く響くドラム 心に揺れる
地球はサバンナ 誰もが狩人
もっと自由に走ってみたい
果てなく広がる 荒野が欲しい
自然な笑顔があればいいの
Be Smiling
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