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エッセイ わが街 わが友  1 「 新橋 」
突風の吹く、新橋の大通り ・・・ ドキドキと、足早に歩いている高校生・・・
重い緑色の制服のコートを身にまとい、長いおさげ髪の少女は、
怖い都会にだまされないよう、必死に、目的地に向かっていた。
三重県から日帰りで、たった一人で上京した私は、
リクルートのスカラシップ生の最終選考面接のため、
地図で何度も確かめたリクルート本社ビルだけを目的に、ひたすら前に進む。
言うまでもなく、都会の大人達は、そんな田舎娘になんか、目もくれるわけもない。
赤信号でも、颯爽と通りを渡っていた。

リクルートスカラシップとは、今でも続いているが、懸賞論文を書き、選ばれると、
大学時代、何と毎月、奨学金が贈呈される制度だ。
正直な所、忙しい受験勉強中に、教師に無理やり書かされ、閉口したが、
結局贈与される十人に選ばれ、高校の国語の先生には、感謝することとなった。

最終面接で会った、当時のリクルートの社長、江副浩正さんは、若々しく、
全国から集まった五十人位の田舎の高校生達に、優しく丁寧に接してくれ、
子供心にも感動した。
「 皆さんに、日本の未来を作ってもらえるよう、お手伝いをしたいと思っています!」
ハキハキとした口調は、江副さん御自身が、日本の未来を切り開こうと、
瑞々しい意欲に満ち溢れていたと思う。
緊張して面接を待ち、顔が強張っている私の前に、担当の総務の女性が、やってきた。
窓の外に立ち並ぶ、今まで見たことのない高層ビルの景観を指差して、耳元で囁く。
「 ほぅら、ビルの上で点滅しているランプはね・・・
ヘリコプターがぶつからないように、いつも光っているの ・・・・わかる? 」
・・・・ ヘリコプターが、ぶつかってしまう程、高いビルなんて ・・・・
私は、目を丸くして、窓に歩み寄った。

もう、32年も昔のこと、新橋の高層ビル、点滅した光と、江副さんの上気した顔、
都会のお姉さんの香水が、今でも、混ざりながら、くっきりと蘇る。

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( 東京新聞 2007.11/16掲載 )
tokyo shinbun

エッセイ | 21:49 | comments(1) | trackbacks(0)

Comment:
2007/11/27 4:36 AM, Sora wrote:
もう随分昔ですが、私も江副さんにお会いしたことがあります。もうリクルートの社長の座は退かれていましたが、それでも私のような若い(当時は…笑)OLに対して物腰もやわらかく、丁寧に敬語を使って話される様子に、あぁこの人は敵を作らない人だろうなぁと感動したことがあります。

michiさん、今日も素敵な思い出を思い出させてくださってありがとうございます。
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