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エッセイ わが街わが友 9 銀座
2002年の夏、私は、銀座みゆき館劇場の舞台に立っていた。
二人芝居「私とわたしとあなたと私
ひょんなことで、私は、自分で脚本を書き、演出し、出演していたのだ。

前年の暮れ、映画で共演した新人の女優が、一緒に、芝居をやろうと持ちかけてきた。
彼女が脚本を書き、私が演出の担当だと言う。
実現できるとも思わずに、軽い気持ちで,
「いいよ」と答えた。
彼女は、早速劇場を押さえ、しばらくして、出来上がった脚本を見せてくれた。
あれれ・・・その脚本では、舞台にはできない、芝居の話は白紙だね。
しかし、せっかく押さえた劇場をキャンセルすることになり、
泣き出しそうになった彼女を見て、慌てて、私は叫んだ!
「 だいじょうぶ! 私が、脚本、書いてみるから・・ 」

人生に絶望した、中年の女子銀行員「洋子」と、
若い風俗嬢、「ポタン」が織り成す、二人芝居。
とにかく、おかしくて、ハラハラして、でもジーンときて・・・
始めて書く脚本に、私は全てを入れ込んだ。
40代にもなり、私自身、何かに絶望していたのかもしれない。
その自分自身を奮い立たせるように、作品を仕上げた。
作品の鍵は、二人の中身が入れ替わること。
すなわち、私が、ほとんど、若い風俗嬢を演ずることになる。
役者としても、大きな挑戦の芝居だ。

舞台初日の芝居が終わった。
お客様を送り出す。
でも、皆、ほとんど無言。
「 おもしろくなかったのか・・・ 」
不安になり、ふと出口を見ると、何人かが、すすり泣いていた。

次の日、厳しい評論家の方から、分厚い手紙が届けられ、
「この船出は大成功!」と書かれていた。

2003年、相手役は「吉川ひなの」に代わり新宿シアタートップスで再演となった。
銀座から新宿へと移った「私とわたしとあなたと私」。
そして、2007年秋、アメリカ、NYのオフ・ブロードウェイで、
この作品が、新たに生まれ変わるとは、夢にも思っていなかったのである。

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( 東京新聞 2007 11/28 掲載 )

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