2013.06.25 Tuesday
映画「ビル・カニンガム&ニューヨーク」
(C) The New York Times and First Thought Films.
映画「ビル・カニンガム&ニューヨーク」を観た
5月から公開されていて、ずっと見たかった
やっと見ることが出来た
映画を見たかった理由
この映画に対する「特別な思い」が、私にはあったからだ
ニューヨークタイムズ日曜版のファッション特集の中で
NYの人達の写真を掲載しているページがある
ビル・カニンガムはその写真とページを担当している
そのビルを追ったドキュメンタリーだ
淡々と彼と彼の周りの人を追う映画だが
その人柄、頑固さ、魅力が、生き生きと描かれ
秀逸なドキュメンタリー映画と仕上がっている
その評判から、公開期間は延長され、劇場も拡大された
延長してもらえたお蔭で、見ることが出来た
・・・私の特別な思いとは・・・
まず、NYに住んだことのある人なら
誰もが懐かしくなる街並、スノッブな人物達、
NYらしい早口の言葉がスクリーンを飾る
懐かしさの、オン・パレードの映像
カラー映画なのに、セピア色にさえ見えてくる
その上、私にとっては、特別
ビルが住んでいたカーネギーホールの斜め前のアパートが
私のNYの住まいであった
だから
毎日歩いた道も、角の屋台も、住まいのアパートそのものも
度々、スクリーンに登場する
「あ!」
と、映画館の座席から、思わずスクリーンを指差す私
確かに、近所を、自転車で走るおじさんがいたっけ
懐かしい、懐かしい、懐かしい
そのままの、私の知っている本当のニューヨークが
次から次へと、目の前に、現れた
そして、もう一つ
実は、ビル・カニンガムに、写真を撮影されている
しかし、私ではない
愛犬のジェシカ
その冬、2004年1月は、記録的な寒さがNYを襲った
マイナス18度のニューヨーク
ジェシカは、フサフサの毛に覆われていても
そのままでは歩かせられない
日本で買った子供用のフリースベストをリメイクして着せ
その下のお腹には
私のスキー用の毛糸の帽子の先をほどいて腹巻きにした
ジェシカは完全防備をして
雪のセントラルパークをお散歩したのだ
そして
週末の日曜日、読んでいたニューヨークタイムズ
その日のテーマは「Flash Frozen」「急速冷凍」
確かに凍える寒さだと頷きながら紙面を覗くと
どこかで見たことのあるような犬・・・
あれ? ジェシカ?
そう!
ジェシカがファッションページに載っていたのだ!
大雪の中、夫が散歩に連れて行き
カーネギーホール辺りで、何かパシャっと光ったと言う
それが、ビル・カニンガムの撮影だったんだ
ジェシカは、それから2年半後に、NYで天に召された
あの日の新聞は、我が家の宝物になった
映画を見て、ビルが、あんなに心を砕いて撮影し
紙面のレイアウトを考えていたのだと、初めて知った
ジェシカは、幸せ者だ
何か事件が起こる訳でもない
ただただビル・カニンガムを追うドキュメンタリーだ
でも、本当にこういう人がいるのがニューヨーク
映画の最後、サプライズで、ビルが喜ぶ場面がある
幸せな気持ちになって、こちらも涙してしまう
人は、何の為に生きるのか
おだやかに、ビル・カニンガムが教えてくれた
私のようにNYに特別な思いのない方でも
存分に幸せな気持ちになれる秀作です
くわしくは「ビル・カニンガム&ニューヨーク」公式HPにて
また
ジェシカがNYタイムズに出た頃のダイアリーは