2013.08.28 Wednesday
母kazukoさん 89歳 忘却の彼方
母kazukoさんが、誕生日を迎えた
89歳
「 いつの間にか、こんな年齢になっちゃって 」
美術館の前でモデルのように横向きポーズをとりながら
感慨深げに、仰った
まあ、私だって、私の年齢に、いつもそう思いますけどね
横浜美術館のプーシキン美術館展に行き
近くのロイヤルパークホテル68階の
フレンチレストランでランチを頂いた
でもね
近頃は、せっかく心砕いて
色々イベントを計画しても、すっかり忘れてしまうから
時々、がっかりしたりもする
けれど、楽しい思いの積み重ねをしてもらえること
人生の、残っている隙間に
ワクワクする気持ちを押し込んでもらえれば
それだけで、私は幸せになれる
実は、kazukoさん
今月は、大変なことがあった
私の舞台「ミステリーナイト」の稽古場最終日の夜
kazukoさんが、救急車で搬送されたのだ
菌が体内に入り、高熱にうなされ、体中のけいれん
もしかしたら、脳梗塞の疑いもあると言うことになり
私は、稽古終わりで、病院に駆けつけた
正直な所、自分自身、風邪の咳がひどく
あらゆる咳止めの薬を飲み続けていた真っ最中で
連日稽古の疲れも、正に頂点に達していた日だった
だから、夜中の救急病院に駆けつけた時は
私自身が、フラフラ状態だったのだ
その上、くわしく書くのは控えるが
一部の救急の医師と看護師との、心ない問答があり
夜中の3時まで対応した病院の廊下は
薄暗くて冷たくて、悪夢の劇場だった
思い出したくもない夜
結局、翌日
脳梗塞の疑いも晴れ、熱も下がったkazukoさん
交渉の末、退院することが出来た
そして、順調に快復し
無事、楽しい89歳の誕生日を迎えられたのだ
「 私、この夏、本当に丈夫で元気だったわ! 」
kazukoさん、自慢げに、のたまう
救急搬送の話をすると
「 え〜! 救急車?入院? 全然覚えていないワ 」
と、笑った
いいよいいよ、覚えていなくて
あんな夜のこと、覚えていなくていい
kazukoさんの誕生日は、とってもいい日だった
美術館で、優しく接してくださる案内の方や
ひどく込み合った人だかりの館内では
車椅子のkazukoさんに
そっと絵画の前をあけてくださる方がいたりした
レストランでは
スープをこぼしてしまったkazukoさんが
「 このスプーンとかフォークが重過ぎたから・・・」
と、かわいい言い訳をしたら
お詫びしながら、お箸を持って来てくださった
お誕生日のケーキを出して、祝ってくださった
食後、ウェイターさんが、わざわざ地下の駐車場まで
車椅子の介助で送ってくださり
車のトランクに、重い車椅子を、丁寧に入れてくださった
その全て、一つ一つが
ありがたくて、ありがたくて、心に沁みた
多分、kazukoさんは、忘れてしまうんだろうけど
でもきっと、断片的に楽しい思いは、覚えているはず
あの68階からの、壮大な景色
雲の合間から、何本もの光が
地上に降り注いでいた、美しい情景
きれいだったね、kazukoさん
覚えてる?
忘れるのは、いいことでもあり、淋しくもあり
kazukoさん、おめでとう
来年は90の大台
がんばろう