岸惠子さんの一人芝居「わりなき恋」を
新宿文化センター大ホールで、観劇した
一人芝居と言うよりは、朗読劇で
ご自身の小説「わりなき恋」を
抜粋して、読み上げる舞台
小説も読んでいたし
岸惠子さんと言う知的な女優さんに
尊敬の念もあり
また、大きなホールで
どうやって朗読をするのだろうと言う興味もあり
チケットを購入して、訪れた
でも、売れ行き良くて
座席は、2階席しかなかった
実は、この舞台を演出された星田良子さんとは
ドラマで、何度もご一緒している
今は、60代半ばで
男勝りに切れ味のいい演出もしながら
女性らしい目線もお持ちの知性溢れる演出家だ
会場に入ったら
ロビーで、星田さんにお会いした
2階席だと伝えたら
言ってくれれば・・と、関係者の席のことを
言ってくださったけど
「でもね、残席、ゼロなんですよ!」と
嬉しそうに、教えてくださった
残席、ゼロ!
これは、すごい!
何と言っても、1800席の大ホールが満席なのだ
お客様は
ほとんどが、私より年上の女性たち
しかも、お一人でいらしている方が多く見られた
ある意味
これは、カルチャーショック!
今の日本カルチャーは
この方々が支えているのでは、と思えた
さて、肝心の舞台
長椅子のようなものが二つあるシンプルなセットに
ピアノや、ハーモニカで音楽が入る
岸惠子さんは、何度か衣装を着替えられるが
際立った豪華なドレスではなく
赤や萌黄色や黒のスーツに、ペンダントだけ
長い小説を、1時間半程の朗読にするのだから
大きく切り取られた内容は
小説とは、別の世界だ
その上・・・失礼でごめんなさい
岸さんが、読み上げる朗読は
朗読としては、上手いと言うわけではなかった
滑舌も甘かったし、何度も言い間違いがあった
でも、でもね
それでも、おそらく、何かが伝わる
岸さんご自身が書かれた小説を
岸さんが、必死にお読みになる
その姿が、大人の女性たちの、胸を打つのだ
舞台が終わり、再び星田さんに会った
「すごいでしょ?岸さん、・・・84歳よ!」
あ・・・
二の句が継げなかった
84歳って、84歳?
スッスと舞台を歩かれる姿
カーテンコールで、バレリーナのように
足を交差して、お辞儀なさった姿
どこにも、84歳の影は見えなかった
書かれるものも
インタビューなどでお話される姿も
若やいだお話ぶりの岸さん
美しく知的で背筋が伸び、凛とした姿
その姿から
時々、岸惠子さんは「何か」と戦う戦士に見える
「何か」って、何か・・・
若さを保つことに闘っているわけではない
なんて言ったらいいのかな
「人生」と、美しく闘っていらっしゃるような
それにしても、素敵だった
星田さんが、最後におっしゃった
「 私たちも、目指さなくてはね〜!」
でも
84歳になった時の私
岸惠子さんに近づくことが出来るんだろうか
多分、1800人の観客たちのほとんどが
同じような言葉を胸に刻んで
ホールを出たのだと思う
「 私も、いつか岸惠子さんになれるよう
・・・がんばろう・・・」