突然
夕方、iPhoneの着信音が鳴った
母、kazukoさんの音色だ
え?
ママから・・・電話?
今年初めに倒れてから
kazukoさんからの電話はない
いや
あったことは、あった
kazukoさんの音色に驚いて電話をとると
「 み、水〜〜〜!」
「 誰か、来て〜〜〜〜!
「 い、痛い〜〜! 助けて〜〜!」
ナースコールと間違えているだけだった
そんな時は
そっとkazukoさんからの電話を切り
慌てて施設に電話し
ナースやケアの方に部屋に駆けつけてもらう
そんなことが、数回あったから
この日も、そんな電話かと思った
でも、ちょっと確かめるように
落ち着き払ったふりをして
「 もしもし・・・」
と、電話に出た
「 ママ・・・どうしたの?」
ほんの少しの沈黙
「・・・あ・・美智子ちゃん?」
驚いた
電話で、kazukoさんが喋った
ちゃんと相手が私とわかって、喋った
「 そう、そうだよ、どした? どっか痛いの?」
「 あのね・・・」
「 どした?」
「 ご飯、どうすんの?」
「 あ、ご飯ね・・・うんうん
今、5時だから、後30分で、夕ご飯だよ
でも、5時から、リビングでお口の体操があるの 」
「 ふ〜ん・・・」
「 お口の体操、する?」
「 うん・・・でもねえ
私、一人で行けないから、迎えに来て 」
「 うん、わかった!
誰かにお部屋に行ってもらうから
待っててね、電話切るよ!」
「 はーい 」
電話を切って、施設に電話する
いつの間にか、目から
汗みたいに、タラタラ、涙、落ちた
kazukoさんの携帯は
お年寄りや子供向けの「見守り携帯」
壊れてしまって、ストラップも付けられない
愛犬のボールが入っていた網の袋に入れ
工夫して、ぶら下げている
そもそも、この携帯
今年11月には
サービスが終了となってしまうと
ソフトバンクから通知されていた
もう使わないからいいや
そう思っていたけれど
もしかしたら
ママ、
11月以降も、使う?
電話する?
してくれる?
ただ
kazukoさんからの電話は、2週間前のこと
たった一回きり
その後
「ママ」と表示される着信音は
一度も、鳴っていない
でもね
この電話
今年になって
一番、嬉しかったことだったんだよ
今年前半期のベストワン
令和の一番!
ありがとうね、ママ